ウィーン音大でオペラの授業を
受け持っていたライトナー先生は
若い頃、ウィーン国立歌劇場で
コレペティトゥーアとして働いていて
海外ツアーにも同行しました。
レッスンの合間や、ランチの最中に
ある日本公演でのエピソードを
何度も話してくれました。
その日の演目は、モーツァルトの
「フィガロの結婚」
ライトナー先生は
チェンバロ担当でした。
休憩の後、第3幕は
レチタティーヴォで始まるので
チェンバロが無いと幕を上げられません。
ライトナー先生は
日本の狭いトイレに慣れなくて
なかなか時間がかかってしまったそうです
その上、
バックステージは迷路・・・
やっとのことで
オーケストラ・ピットにたどり着くと
オーケストラ奏者も指揮者も
すでにスタンバイして
まだかまだかと
チェンバロ奏者の到着を待っていました。
ライトナー先生が申し訳なさそうに
チェンバロの前に座ると
指揮者のカール・ベームが
叱りつける代わりに一言:
Der Kaiser wartet !!!
デア カイザー ヴァルテット!!!
天皇陛下がお待ちだ!!!