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ウィーンの謝肉祭(カーニバル)の風習

オーストリアでは毎年、11月11日から「灰の水曜日」の前日の火曜日までが „Fasching“ (ファッシング)、日本語で「謝肉祭、カーニバル」という期間です。謝肉祭は、ドイツ語で Karneval, Fasching, Fastnacht という3種類の言い方がありますが、オーストリアでは Fasching と呼ばれます。カトリックの暦の「灰の水曜日」は毎年移動し、今年2023年は2月22日なので、2月21日までが謝肉祭の期間です。この期間は同時に、一番多くの舞踏会が開催される、舞踏会シーズンでもあります。

 

謝肉祭のお祝いには、仮装をする伝統があります。謝肉祭シーズンがいよいよクライマックスを迎えると、ダンススクールでも謝肉祭パーティーが開かれます。普段はスーツ、ワンピースまたはスカート、のようにドレスコードが決まっている高校生クラスでも、このパーティーには皆さん仮装して来ます。ネコ、ウサギ、てんとう虫、蜂など可愛いらしいものから、医者、魔法使い、ピエロ、ピカチュウなど、なんでもあります。3頭の大きなティラノサウルスがやってきた時は、天井のシャンデリアを大きな頭で壊してしまわないかとハラハラしました(笑)。
ちなみに、仮装しての役割遊びといえば、すでに古代ギリシャ・ローマ時代に、主君と召使いが立場を交換する日が設けられていたそうです。主君は一日の間、奴隷たちに仕え、奴隷たちは主君を皮肉って真似することが許されました。
仮装をするもう一つの意味は、冬を追い払うことです。アルプス地域では古くから、おそろしい顔の仮面や太鼓や鈴の大きな音で春が早くやって来ることを祈りました。

謝肉祭に食べるものの代表が、ファシングス・クラプフェン(Faschingskrapfen)という揚げパンです。中身はアンズ・ジャムが代表的で、他にバニラ・クリーム、チョコレートなどがあります。どのパン屋さんやお菓子屋さんでも売っていますので、ウィーンへお越しの際はぜひお試しください。

謝肉祭期間の最終日である”Fachingdienstag”(ファシング・ディーンスターク)の夜に、昔は謝肉祭のお葬式を表現した仮装行列が行われたそうです。ウィーン楽友協会の資料室に、その様子を描いた絵が残されています。1860年に描かれたもので、お葬式の格好に仮装をした行列が、ワルツやポルカなどのダンス音楽の楽譜を、棺桶に見立てた箱に入れて運んでいます。専用の葬送音楽が奏でられ、喪章をつけた女性たちと、消えたろうそくに扮した男たちが列をなし、ダンス教師は踊りの音頭を取る代わりに謝肉祭期間の終わりを告げています。これはブラックジョークだったのでしょうか、それともカーニバル期間最後の冗談のお芝居だったのでしょうか。いずれにしても、大変興味深いです。

FASCHINGDIENSTAG

そして、謝肉祭の後にはFastenzeit(四旬節)が続きます。復活祭までの40日間、伝統的には断食の期間として、食事や祝祭の自粛がされてきました。おもしろおかしく大騒ぎしたり、クラプフェンなど甘いものを食べることは禁じられていたので、人々はその前の謝肉祭の間に、思う存分大騒ぎしたという訳です。厳しい戒律は時と共に薄れ、今では四旬節中にお肉を絶つ人はほとんどいませんが、私の知り合いの中には、お菓子を絶つ強者が何人かいます!

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