燕尾服のシャツの襟は立ち襟になっていて、ドイツ語で Stehkragen と言いますが、
それには別名があって、Vatermörder「父親殺し」とも呼ばれています。
どうしてこんな別名がついたのでしょうか?
この立ち襟の形は19世紀にフランスで考案され、
フランス語で ”parasite”(居候、寄食者)という言葉で呼ばれていました。
この名前の由来は不明で、
「立ち襟の部分を他のシャツに付けて使い回しできたから」
という説と、
「食事の際に襟先を汚してしまいがちで、襟が寄食しているイメージでこの名が付いた」
という説があります。
ドイツ人がフランスでこの立ち襟に出会ったとき、
フランス語の parasite を
parricide(親殺し)
と聞き間違えてしまいます。
そして、男性が着るものなので、母親を除いて
Vatermörder(父親殺し)
という呼び名になったそうです。
さらに後から、「父親殺し」という名前の由来がこじつけられました。
より科学的な理由付けとしては、
「立ち襟は硬い生地でできていて、身につけると首がぎゅっと押され、皮膚に食い込む。
頸動脈が圧されることで、反射性の血圧降下が引き起こされ、めまいと血液循環虚脱が伴い、死に至ることもあり得る・・・」
というもの。
もう一つは、
「ある息子が故郷に帰ってきて、喜びのあまり父親に抱きついてキスをしたところ、立ち襟の先が父親の目に刺さって、死に至らしめた・・・」
という説です。
くわばら、くわばら。