燕尾服は、ドイツ語で Frack(フラック)と言い、白い蝶ネクタイを付けることから、”White Tie” や ”Cravate Blanche” とも呼ばれます。
夜の催しで着る服装の中でもっともエレガントな、非の打ちどころのないデザインは、イギリスの乗馬服と軍服から発展しました。
ただ、慣れていないと着るときに誰かの助けを借りないと困ることになるかもしれません。
それでは、燕尾服を着る際に気をつけたいポイントを見ていきましょう。
午後6時以降
燕尾服はタキシードと同じで、18時以降に着るものです。
なので昼間に行われる結婚式には向いていません。
招待状に「ドレスコードは燕尾服(ホワイト・タイ)」と書いてある場合、女性はイブニングドレスまたはスカートが大きく広がったデザインの夜会服を着ます。
燕尾服のパーツ
- ジャケット(ドイツ語で Die Frackjacke)
襟には絹の折り返しがあり、すそは長い尾の形になっています。
胸ポケットには必ず白色の飾りハンカチ(ドイツ語でStecktuch)を入れましょう。
ジャケットの前側はダブルになっていますが、開けたまま着用します。
- スラックス(Die Hose)
タキシードと同じように、側面に光沢のある飾り紐が付いていますが、燕尾服ではうね織になっています。
裾の折り返しはありません。
ベルトは使用せず、サスペンダーで着用します。
- シャツ(Das Frackhemd)
そで口は二重のカフス(doppelmanschetten)になっており、襟は立ち襟(Stehekragen)で、胸の部分はピケ(太いうね織りの綿布)で補強されています。
側面に開いている所があるのは、ボタンを固定するときにそこへ手を入れるためです。
ちなみに、立ち襟はドイツ語で「父親殺し”Vatermörder"」とも呼ばれています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
- スタッドボタン(Die Frackhemdknöpfe)
これらのボタンは穴に差し込んで付けます。
以前はネジで締めて固定するタイプのものもあったそうです。
材質は、真珠、プラチナ、ダイヤモンドが施されたものなどいろいろなものがあります。
慣れないうちは、人の手助けが必要になる部分です。
- ベストと蝶ネクタイ(Frackweste und Masche)
どちらも白のワッフル・ピケでできています。
ベストを着るので、燕尾服の上着はボタンを閉めずに開けたまま着用する訳です。
ほとんどの場合、ベストの前の部分だけがある形で、それに付いているゴムや布製のベルトを後ろ側まで回して留めます。
タイにはいろいろな形がありますが、うなじの部分はゴム紐よりも、白い布製のストライプの方がエレガントです。
首の後ろにあるボタン穴に真珠のボタンを通して留めますが、この方法が不快である場合は、白いピケのボタンをウェストコートに縫い付けてもらいましょう。
- その他
靴下は黒で膝までの長さがあるものを、靴は黒のエナメル靴を履きます。
時計は懐中時計で、金またはプラチナ製の鎖が付いているものが望ましいです。
たとえ高価なものでも腕時計は身につけません。
懐中時計はベストのポケットに入れ、鎖は小さな留め輪でズボンのポケットに固定します。
他に必要であれば、帽子はオペラハット(Chapeau Claque)という折り畳みできるシルクハット、白い手袋、そして白い絹のスカーフを、燕尾服に合わせることができます。
まとめ
- 午後6時以降に着る
- 上着にはポケットチーフを
- ズボンの脇縫い目にはブレードがついている
- シャツは折り返しのついた袖口で、立ち襟、胸部はワッフル・ピケでできている
- シャツに留めるスタッドボタン
- 白のワッフル・ピケで作られたベストと蝶ネクタイ、ベスト用のボタン
- サスペンダー
- 黒の膝丈の靴下
- 黒のエナメル靴
- 懐中時計
指揮者の佐渡裕さんは、燕尾服はいくつものパーツがあって、いつもどれかを忘れてしまうので、着ないようになった、とおっしゃっていました。
女性はドレスをスルッと着てしまえばほぼ完了なので、男性は大変だなあと思います。
ボタン、蝶ネクタイ、サスペンダーをまとめて一つの袋に入れておくなど、いろいろ工夫してみてくださいね。
さいごに
燕尾服を「仕事着」として頻繁に着るオーストリアのダンスの先生たちは、人の手助けなしに、10分で着ることが出来るそうです。
何事も練習あるのみ!です。
ぜひ舞踏会の前に燕尾服を着る練習をしておきましょう。