初めてダンスを習いに来る方の多くが、「自分にはダンスの才能がない」とおっしゃいます。
ダンスに「才能」は必要なのでしょうか?
そもそも「才能」とは何でしょうか?
私には「才能」がありません
ダンスのレッスンに初めて来られる方のほとんどが、最初に口に出す言葉、
それは、「才能」です。
例えば、ドイツ語で、
Ich habe kein Talent!
Ich bin ein Antitalent!
「私には才能がありません!」という意味です。
社交ダンスが若者の間で浸透しているオーストリア・ウィーンでも、若いときにダンススクールへ行く機会を逃した方や、外国からウィーンに移住した方など、大人になって初めてダンスを習いに来られる方がたくさんいます。
1回目のレッスンで、まず挨拶を済ませると、自己紹介の代わりに、
「私には生まれつき才能がないので、教えるのがとても大変になると思います。」
「才能の無い私を教えなくてはならないなんて、申し訳なく思います。」
との表明があります。
冗談好きな人は、
Ich habe zwei linke Beine!
「両足とも左足です!」
とおっしゃいます。
このように「才能がない」とおっしゃる方に、「ダンスを習ったことがあるのですか?」と聞くと、「ありません!」と答えがきます。
まだ試したこともないのに、初めから「自分は上手くできない」と決めつけてしまっているのです。
「才能」とは?
「才能」とは何でしょうか?
大辞泉には、
「物事を巧みになしうる生まれつきの能力。才知の働き。」
とあります。
確かに、生まれ持ったある要素が有利に働くことはあります。
例えば、生まれつき背が高ければ、バレーボールで有利です。
しかし、作曲家のモーツァルトが、優れた音楽家で教育者のレオポルト・モーツァルトを父に持たなかったら、
「天才」と呼ばれるほどには至らなかったでしょう。
モーツァルトは、生まれつきの「才能」でもって素晴らしい作品を残せたのではなく、
最高の教育を受けたからこそ、最高の作曲家になれたのです。
この点について、ライバルの作曲家サリエリが映画「アマデウス」の中で言うことは事実です。
音楽でも、ダンスでも、良い教師と学ぶ環境がそろえば、誰でも能力を伸ばすことができます。
「才能」は必要ない
ダンスに「才能」は関係ありません。
「才能」なんてものは存在しない、と言っても良いでしょう。
ダンスは誰でも習得できます。
最初はなかなかステップをマスターできなかった人が、10回目のレッスンあたりからグングン上達する、なんて例はよくあります。
もし、なかなか覚えられない、まったく上達しない、という場合は、教師の教え方に問題がある可能性が大きいです。
さいごに
何かを習得しようとするとき、リラックスしている方が効率よく学ぶことができる
という研究結果があります。
すでに最初のレッスン前から、「自分には上手くできない」と決めつけ、ナーバスな精神状態でレッスンに臨めば、
普通ならすぐにできるはずのことも、難しくなってしまいます。
ダンスのレッスンを受ける際は、前にも後にも自己評価を下さないで、リラックスして臨みましょう。