オーストリアでは、世界で唯一、ダンスの先生 Tanzlehrer/Tanzlehrerin になる為の、国家試験があります。ウィーンでは、この免許がなくては、ダンスを教えることは許されていません。私は、最初の日本人としてこの試験を受け、無事合格することができました!
Ausbildung 職業教育・養成課程
国家試験を受けるためには、3年間の職業研修を受ける必要があります。
まず、研修生になる為の、入学試験があります。
課題は、10種目のダンス:
スタンダード(ワルツ、タンゴ、フォックストロット、クイックステップ、ウィンナーワルツ)
ラテン(チャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソドブレ、ジャイブ)
を、一人で音楽に合わせて踊って見せること。
10人の試験官たちが、それぞれのダンスを○かXで判断し、○の合計が70パーセント以上であれば合格です。
研修生となって初めて、正式にTanzschule (ダンススクール)で働く資格が得られます。
ただし、「アシスタント」として、教師免許を持った先生のもとで手助けすることに限られます。
最低でも週に14時間勤務することが義務付けられていて、年度末に勤務時間と勤務内容を表にしたものを提出しなければなりません。
3年間の養成課程では、国家試験で出される項目を少しずつ勉強していきます。
その1年目と2年目の終わりにも試験があり、それに通らないと、次の年に進めないことになっています。
Tanzlehrprüfung 国家試験
晴れて3年間の養成課程をクリアしたら、いよいよ国家試験を受ける権利が得られます。
国家試験は、筆記試験を実技試験に分かれて行われます。
筆記試験の項目は、
教育学、心理学、オーストリアの法律、政治の仕組み、EUの仕組み、営業法規、労働法、倫理学。
もちろん全てドイツ語です。
2時間の制限時間いっぱい、かなりのスピードで書かないと終わらないくらいの量でした(汗)。
実技試験の項目で、メインになるのが
スタンダード(ワルツ、タンゴ、フォックストロット、クイックステップ、ウィンナーワルツ)と、
ラテン(チャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソドブレ、ジャイブ)です。
試験官から、フットワーク(かかとからステップするか、つま先でステップするかなど)、回転角度、どのようにリードするか、など、技術的な細かい質問が出されます。
他に、サルサ、スクエア・ルンバ、アルゼンチン・タンゴ、ロックンロール、ウェスト・コースト・スイング、ディスコ・フォックス、パーティーダンス、古典舞踊とカドリーユ、ポルカ、クラシック・バレエ からも出題されます。
それに加えて、口頭試問で、音楽史と楽典、ダンス史、そしてもちろん、マナーと礼儀作法 がテストされます。
科目がこれだけ多いので、一日3〜4人ずつ試験を受けて、それでも9時から16時頃までかかりました。
ダンスの先生は Vorbild (お手本)
以上、世界で他に類をみない、ダンスの先生になる為の国家試験の詳細でした。
なぜこのような試験があるのでしょうか?ダンスの先生が増えすぎないようにする為ではありません。オーストリアでは、古くから、Tanzlehrer は、人々の Vorbild (模範、お手本)と位置付けられてきました。それは、彼らがダンスのステップだけでなく、優雅な身のこなしや、礼儀作法も教えてきたからです。ダンスの知識がしっかりしているだけでなく、他の教養も身に付けているべきだ、というわけです。
この国家試験は、ダンスを教える許可を与えるものですが、これだけでは 自分のTanzschule(ダンススクール) を開くことはできません。オーナーとしてで経営する為には、さらに、Meisterprüfung (マイスター試験)を受ける必要があります。マイスター課程では、経営学や法律を勉強し、最後にまた試験があります。さらに2年間ダンス教師として働いた後に、ようやくマイスターの称号が与えられます。
マイスター課程のついてはこちらです。